故郷の梅
茨城のお婆ちゃんの御葬式を終えて、アメリカに帰って来ました。
96歳の大往生だった。
私の奥さんを含めて、3人の子供の家庭が集まっての家族葬だった。
北茨城の農家の暮らしは楽ではなく、農業の他に父親が東京に出稼ぎ行って家計を支えていたそうで、お母さんも苦労もされて子供を育ててこられた。
久しぶりに集まった兄弟が、そんな亡きお母さんとの思い出をポツリポツリと話し合う。
私の奥さんは長女なので母親との思い出は多い方だが、それでも兄弟それぞれお互いに知らなかったお母さんとのエピソードが出て来る。
10歳下の長男が「貧しかったけど、今思えば皆んな楽しい思い出ばかりだった」と振り返り、みんな頷いていた。
私にとっては義理の母になるが、本当に子供達と孫達の事を愛した働き者のお母さんだった。
葬式と納骨まで1日で終わらせたが、故郷に住む子供の家族がいないので仕方あるまい。
寺にはお墓の世話が出来なくなった家も多いらしく、荒れ果てたお墓が寂しく点在していた。
お寺の本堂に続く坂を登ると、見事に咲いた梅の古木があった。
力強く生きた義理の母の様でもあり、暫く眺めていた。
「素晴らしい娘さんを、嫁に頂けて有難うございます」とお墓を後にする前に手を合わせました。
故郷を後にしてそれぞれの住む町へ帰って行ったが、あの梅の木がお墓を見守ってくれているだろうと思うと心が慰められる。
故郷に 母を弔う 寺の梅