夜空の下のドーナツ
先週ロサンゼルスに帰った時、次男が話があると言う。
どの親でも息子から話しがあると言われた時はドキッとしますよね。
その日は連休前の為に朝2時起きで3時から10時まで仕事、飛行機でロスにヘトヘト着いて、夕食の刺身を切ってヤットゆっくりしようとした時だった。
魚屋は因果な仕事である。
明日でいいんじゃないか〜と思ったが、揺れ動く青少年の心は明日には分かりません。
近くのモールに2人で出かけて夜空の下、ドーナツをかじりながらベンチに座り話を聞いた。
進路で迷っているらしい。
長男もそうだが、次男も高校まで全く勉強が出来ない奴だった。
高校卒業後チャーチのボランティアで人間に揉まれ、べルーのスラムで小学校を建てるプログラムに参加したりして、何か感ずるものがあったのだろう、
帰って来てから別人の様に勉強して、大学も残すところ後1年余り。
コンピュータ サイエンス専攻なので進路の相談なんてされても僕には分かりっこない。
自慢では無いが僕は高校1年で数学を捨てた男である。
まあ色々と大変なんだろうと思いながら、話を聞く事に専念した。
コロナ禍で卒業を諦める友人も多いという。(アメリカは入学より卒業が難しい)
三つぐらいのコースのどれを選ぶかなんだが、何度聞いても何の事か分からない。
一つだけアドバイスしたのは、今の自分の実力で難し過ぎるコースと、簡単なコースは辞めた方が良い。
一歩努力してチャレンジ出来るものを選んだ方が、達成感があって自分の自信になるよ。
やっぱりチャレンジの無い青春は面白く無いですよね。
次男が運転する帰りの車の中で、母の事を思い出していた。
ずいぶん古い話だが、アメリカから小学生の息子達を連れて帰省した時だった。
親の見栄もあったのだろう「子供達は勉強はまあまあ出来る方だよ〜」と事実とは違う事を母に伝えると
見据えたように「勉強なんか数が数えられて、字も読み書き出来ればそれで十分だよ」
「チョット長男の鼻が低いんだよね〜」と言えば
「鼻なんか息を吸えれば十分、高過ぎて傲慢な人に見えなくてええよ」
え!あの僕の小学校時代に恐怖のスパルタ教育をしてくれた、母の言葉とは思えない悟りの境地!
人間歳を重ねると大切なのは容姿や頭の出来などの枝葉末節な事ではなく「しっかり生きる事」と悟って行くのだろうか。
先日、兄から母ももう長くなさそうだと聞いて、母との思い出を噛み締めながら日々を過ごしている。
そんな母の言葉を思い起こしながら、次男にも「しっかり生きてくれれば、他はいいんだよ」と思った。
お土産に余分に買ったドーナツは奥様と長男には不味いと言われた。