砂漠の徒然草のブログ

ネバダで単身赴任、心の泉を求めて彷徨うワタシ。

そこに愛はあるのか!

ビバ スパニッシュ(ちょっと武勇伝)

今、アメリカの飲食店や工場でスパニッシュ系の従業員を使っていない所はマズ無いだろう。
高級レストランも裏方は殆どスパニッシュ系だ。
日本食レストランも彼ら無しではまず店が回らない。実によく働いて下さる。


かく申すオジサンの会社もメキシコ、エルサルバドル、キューバなどスパニッシュ系が多い、日系高級食材を扱っているのでセールスは日本人だがドライバーやプロセシングは彼ら無しでは会社が回らない。
昔、大学生の時にスペイン語を第一外国語にしていた友人が言っていたが、発音が英語と比べて楽だそうだ。(ちなみにオジサンは中国語)
だから一緒に働いているとお互いの言葉を覚え合ってゆく。
彼らにしても日本語の発音は楽の様で色々な日常会話を覚えて行く。
「おはようございます」「どうもどうも」から始まって、
「オサムライさん」
「あっ、そうですか」「スミマセン」「ごめんネ」
「バカだネ~」「ダメね~」「早く早く!」「問題ない」「ちょっと待ってネ!」
などなど、変な日本語が毎日会社の中で聞こえている。
今流行の「そうだね~」も北海道人がいるからか、いつの間にかキャチしている。
少しボ~としていると「ナマケモノ!」とヤジも飛んでくる。
給料査定の時以外は、すべてがアミーゴのカルチャーなのだろう。


日本の様に上下関係という物があまり無く、「仕事上、そりゃ無いだろう!」と思う事が多々ある。しかし、彼らがいると職場が明るく,楽しくなる事は確かだ。


今の会社は買収して始めたので、前の会社の従業員も継続して働いてもらっているが、オジサンが働き始めた時はなかなか大変であった。
彼らは役職、ポジションで従うと言うわけではなく、実力が無いとなかなか納得しない。
ドライバーなどもセールマンの実績、実力を見ているのである。もう一つは体力だ。そして働きぶりをよく見ている。
オジサンも前の会社の責任を終わらせてから、少し遅れて入ってきたので、彼らとしてはどんな奴か興味深々であったのだろう。
基本ヘラヘラしているので色々とチョッカイを出してきた。
ある時、本マグロを20分で解体する大男が突然後ろから羽交い絞めしてきた。
昔、柔道や剣道をしていた事があるとオジサンが彼らに話した事があるので、実力を試したかったのであろう。


オジサンは部活に入っていた訳ではなく、高校、大学の授業で習っただけなのだが、ただ男3人兄弟なので格闘技ゴッコはよくやっていた。
特に兄がプロレスやら柔道やらの覚えた技をかけたがるのだが、オジサンはその頃クラゲの様に身体が柔らかく、一本背負いを食らってもネコの様にクルリと立ってしまう。行を煮やした兄は巻き込みを入れてオジサンの腕が折れてしまったこともあった。
とかく、男兄弟だけだと荒々しい生活環境になる訳だ。
そういえば猪木のコブラツイストに改良を加えた「アオダイショウ盆踊り」なる技を兄が編み出していたが、あの技はどうなったのだろう。


話を戻すと、大男の羽交い絞めは色々やったがビクともしなかった。300キロの本マグを扱う腕力である。オジサンも背丈は175センチあるが大男は2メートルをゆうに越している。彼は勝ち誇ったように笑いを浮かべたが、オジサンは羽交い絞めの外し方を熟知していた。
まず、フェイントで足を賭けたりした上で前に屈む、大男は外しまいと力を込めてくる。
一挙に後ろに仰け反ると、彼の重心がわずかにズレた所で、もう一度すばやく前に頭から転がるのだ。
前かがみでは無く突然体を回転させたので、大男はたまらず前倒しになってしまった。
オジサンは柔道の受け身の要領で回転した後、直ぐに立っている。
周りで見ていたスパニッシュワーカーは「ワオー」と驚きながら歓声を挙げている。
誰も大男の羽交い絞めを崩せるものはいないと思っていたからだ。


それ以来ブルースリーとかジャッキチェンと呼ばれるようになったが、オジサンは「オサムライさん」と呼べと言った。
しかし、大男はあきらめがつかなかった。
その体力とコワオモテでワーカー内の地位を保っていたからである。


1か月ほどして、トラックの積み荷をするローデング ドックで彼は仕掛けて来た。
同じ羽交い絞めだが、オジサンが前転でハズシにかかると予想していたので、彼の重心を後方にズラして来たのだ。
羽交い絞めは「虚」を作らないと外れないので、今度は前転するフリをして身体を横にズラし足をかけて横のダンプスター(ゴミ箱)の中に倒してしまった。
固唾をのみながら見ていたワーカーは、またも歓声を挙げながら「オーマイ ゴッド!」「オサムライさん!」と喜んでいた。単純な人たちなのだ。そこが面白い。


それ以降、彼がチャレンジして来ることは無い、オジサンが来てから売り上げが倍化したので実力を認めてくれたのだろう。


今は一緒に楽しく働いている。
かの大男は、あの後以来仲良くなっている。
あだ名を「タコ八」とつけてやったら本人は大変喜んでいる。


ただ、少し気になるのは彼の前を通ると「(*´ε`*) チュ」と投げキッスをして来るのだ...。
ホドホドの付き合い方にしようと最近思っている。

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