聖おにいさん
新しいアパートをシェアしているアメリカンのSさんが、リビングに何かステキな置物をおきたいと言う。
確かに殺風景なリビングにはデコレーションが必要だ。
「オレは構わないよ」とオジサンは言ったものの明朝、その置物を見て我が目を疑った。
仏像である。
他にも置物があるならともかく、唯一ある置物が仏像とは....。
オジサンもSさんも教会の古株である。
夕食の時に思い切って聞いてみた。
オジサン:「アレは何だ。」
Sさん:「おー!スリーピング ブッタだ、ナイス アートだろう」
オジサン:「クリスチャンから宗旨替えしたかと思ったぜ⁉」
Sさん:「NO,NO,NO~ 癒しのアートだ、良いだろ〜」
オジサンは涅槃のゴーダマ シッタルタさんを見ながら、曖昧に頷いた。
アメリカではこのタイプの仏像がアートとして人気だ。
ラスベガスの有名なナイトクラブの中には巨大な仏像がそびえる店もある。
しかし、この仏像の下で酒を飲み踊るのだから信仰の対象でない事は明らかだ。
アメリカ人にとっての仏像の表情はミステリアスでエキゾチックな魅力があるようだ。
モットも七五三,正月には神社に、クリスマスにはツリーを飾り、結婚式は十字架の前で愛を誓い、葬式は仏教で行い、あなたの信仰は何ですかと聞けば大半は「無宗教」と答える我ら日本人の宗教性こそ他の国からは理解し難いようだ。
オジサンはそれぞれの宗教が時代的、地域的に摂理的使命があったと思っているので寛容な立場である。
ガンジーの言葉だったと思ったが
「キリスト教もイスラム教もヒンズー、仏教も、その神髄は共通した一つの事を言っている。それは“他の為に生きなさい、愛しなさい“と言う事だ。」
残念ながらカンジーの名言集の中にこの言葉を見つける事は出来なかったので、もし違ったらオジサンの名言集の中に入れておく事にしよう...,,,,。
実はオジサンは「禁断の書」を読んでしまっている。
むかしむかし、静岡の実家に帰った時に、その「禁断の書」を発見してしまった。
罰当たりな事に、何と目覚めた人ブッタと、神の子イエスが世紀末を無事超えたという事で、下界に降臨して東京 立川の下町のアパートで2人でバカンスを楽しんでいるというストーリーのマンガであります。
この『聖おにいさん』は仏教界とキリスト教界からクレームが来て、すぐ立切れとなるかと思ったがアニメ映画化され、何と実写化もされるそうだ。
こうしたマンガが許されるのも神仏混合し他宗教に寛容な日本の文化ならではかもしれない。
七福神なんかも恵比寿様以外は全て外国の神様で、神道、仏教がかなり入り混じっている。
実はオジサンはバチ当たりな事に、この「聖おにいさん」を15巻まで持っている。
流石に教会の牧師先生に見せてはいないが、オジサンの愛読書の一つだ。
イエス様、ブッタのみならず真理を追究し世の為、人の為に生きられた義人聖人たちが、霊界で仲良くしていると思うのは間違ってないと思う。
多様性を受け入れる事も重要である。
本質は「天を敬い、人を愛する事」にあるのだから、”One Family under God“だ。
そんな事を思いながらリビングにある涅槃の仏像を眺めていたが、フッと仏像の首に付いている値札は何時取るのだろう.....と思った。