砂漠の徒然草のブログ

ネバダで単身赴任、心の泉を求めて彷徨うワタシ。

そこに愛はあるのか!

Rocky Mountain越え

先日、ST Goerge市に渓谷を超えてドライブしたが長距離なのでYさんと2人でドライブして来た。
Yさんの家族はデンバーに居るので、デンバーからラスベガスへハイウエー70を何度かドライブしたことがあるそうだ。このハイウエー70は実に美しい道です。


30年ほど前になるがオジサンはNon-Profit Organization (NPO)のボランティア活動でハイウエー70を使ってロッキーマウンテンを越えた事が何度かある。


ジョン デンバーのカントリーロードの曲を口ずさみたくなるような道もあれば、岩に囲まれた渓谷や、絶壁をだどるスリルとサスペンスの道もあった。


あれはちょうど今頃の季節だったと思うが、男女6人ぐらいの若者と大型バンでロッキー越えを試みた。
翌日の昼までにコロラド スプリングに着かなければならなかったのでドライバーを交代しながら夜も徹して山越えする事にした。
ロッキーの麓の町まではオジサンが運転したが、少し粉雪も降ってきたし山道に自信があると主張するアメリカンのアーノルド君に夜の運転を任せた。
助手席にはおしゃべりなジョニーを座らせた。
彼女はドライバーに居眠り運転をさせない役目がある。
オジサンは後ろの席でウトウトと眠りについた。


夜の11時頃だっただろうか、ずいぶん曲がりくねった山道をドライブしている事は眠りながらも分かっていたが、突然「ギャオー」というジョニーの叫び声が聞こえ、バンが揺さぶられながらスピンして止まった。
「OH My God!!」と叫ぶアーノルドの声に目を覚ましたオジサンや他の乗員が、体を起こそうとすると、アーノルドが「Don't move! 動くな!」と叫ぶ。
なんと! オジサン達が乗っているバンが道を外れて崖の端がら落ちる寸前なのである。
もはや左側のタイヤは地面に着いておらず、宙に浮いている。


下手に動いてバランスを崩せば谷底に真っ逆さまだ。
普通の谷底ではない、ここは箱根の山も函谷関も足元におよばない「天下の険」ロッキー山脈である。


どうやってバンから安全に脱出できるか、頭も動かざず目と口だけ動かして話し合った。
取りあえず3人の女子からゆっくりと車から外に出した。
そしてオジサン達もビクビクしながら無事に脱出したが、外は次第に吹雪始めて強烈に寒い。ウロウロしていたら「八甲田山 死の彷徨」だ。


こんな時間に車は通らないだろうと途方に暮れていたが、一台のジープが希望のヘッドライトを照らしながら山道を登ってきた。
ユタの大学生だった。事情を話すと「オッケー」と快く3人の女子を暖房のきいたジープの中に入れてくれた。カッチョ良いブロンドの若者が天使に見えた。
彼は麓まで降りてレッカー車を呼んで来てくれると言う。1時間ほど登ってきた山道を私達の為に麓まで降りて助けを呼んでくれると言うのだから有難い。彼が神に見えた。
まさに地獄に仏だ。
雪が降っているので女子達は一緒に暖かなジープに乗って麓まで行ってもらい、オジサン達男3人は2時間ほど雪のなか寒さに震えて待つことになった。


この時ほど「女子に生まれたら良かった」と思ったことは無い。



人は極限状態に陥ると本性が出て来るものである。マークはこの状況をネガティブに分析し夜のロッキー超えを計画したオジサンとアーノルドを裁いている。


運転していたアーノルドは谷に墜落しそうになった恐怖を思い出しながらも生きている事を実感して、神に感謝しながら「良かったな!俺たちはラッキーだな!」としきりにオジサンに無駄にポジティブな同意を求めてくる。
オジサンは寒空の中、この二人の会話を聞き流しながら助けが来るまでの時間を耐えていた。
アーノルドに事故の詳細を聞いたところ、居眠り運転だった。
単調な山道を走っている内にフッと眠けに襲われ、気付くと左側の崖にぶつかりそうになったので急ブレーキをかけたらスピンして左側の崖っぷちに落ちそうになってしまったそうだ。
「助手席のジョニーは気づかなかったのか?」と聞いたら、「彼女も居眠りしていた」と言う。
2時間ほどしてジープの若者がレッカー車を連れて来てくれた。


ほとんど落ちかけているバンをどうやって道に引き戻すかと思ったら。「バンパーにチェーンを巻き付けて引っ張るから、バンのサイドブレーキを外して来い。外したと同時にイッキョに引っ張る」という。
「ほとんど落ちかかっているのに、あのバンの中にもう一度入るのか」と聞き返したが、それしか方法がないそうだ。


誰が中に入ってサイトブレーキを外すかという問題になった。
下手をすれば、ブレーキを外した瞬間、バンもろとも谷底に落ちるかもしれない。


2時間たっぷり神に感謝していたラッキーなアーノルド君にやってもらう事を、オジサンはマークと暗黙の同意を得て推薦した。


こうして、運よく何とか無事にバンは道へと引き戻された。


レッカー車のオジサンにお金を払い、助けてくれたジープの青年に感謝と謝礼を渡した。
実に素晴らしい青年であった。


ずっとジープに乗せて頂いていた女子3人に聞くと、モルモン教徒だそうだ。
「麓に着いた時もコーヒーやドーナッツを買ってくれて、寒く無いようにブランケットも貸してくれたわ~ナイスガイ!」と口にドーナッツの粉を付けながらジョニーが言う。


オジサン達男三人は「ふ~ん、美味しい思いをしてよかったね。で、俺たちのドーナッツは無いんかい!」と心の中で思った。
ともあれ、何の宗教、宗派であろうが、その教えの素晴らしさは「行動と人格」に現れるものである。


バンは元に戻ったが、さすがに夜のロッキー越えはあきらめた。
麓まで戻って朝になってからロッキー越えをする事になった。


事故があった場所に寄ってみた。落ちそうになった崖っぷちから下を見たが、底が見えないぐらい深い谷である。
こんなとこから落ちたら骨も拾ってもらえない、まさに奈落の底だ。


フッと道の反対側を見たら、白い十字架が何本もさしてあった。
たぶん、以前何人かがここで落下事故を起こして亡くなったんだろうと思った。


『九死に一生を得る』とはこの事だ。


この前30年ぶりにアーノルドに会ったが、当時20だった彼も太目の良いオッサンである。
「あの白い十字架の一つにならなくて良かったな⁉」と言うと、彼はただ笑っていた。


「笑い話で済んで、つくづく良かったな」と思うオジサンであった。







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